日本とシルクロードの友情を育てる
Tengritagh Shamili
会報
天山の風
第25号
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「いい日旅立ち」を熱唱するジャミラさん、ダップの独奏を披露するニジャットさんさん(左から)
「私たちは日本に来てから、たくさんの日本人に親切にしていただきお世話になっています。
その日本が大変な災害に見舞われ、多くの日本人が苦しい目に遭っています。
私たちも私たちにできることで被災者を励まし支援したいと思いました……」
この思いから、楽器や踊りの得意なウイグルの人たちが立ち上がって、4月16日、
チャリティコンサート「シルクロードからのウイグルの風」を開催しました。
(計画:海尼 天山(Gheni Ghupur )、報告:柿崎 浩子、撮影:佐竹 保雄)
主催は天山文化交流協会とさせていただきましたが、無料で会場のホールを提供してくださった、 ザ・パレスサイドホテル様、力強い協賛をいただいた京都民際日本語学校様の存在も大きな力になりました。 またNPO法人SKC企業振興連盟会船場経済倶楽部の皆様の絶大なご協力をいただき、130人を越える参加者を迎えることができました。 チャリティコンサートを応援していただきましたすべての皆様に心から御礼申しあげます。
プログラムはレイハンさんによるウイグルの生活と文化を紹介しながらの司会で進められ、変化に富んだ美しい衣装による舞踊や歌、 楽器演奏が繰り広げられました。参加者には外国人も何人かおられ、京都に住んでいるけれど大阪の漫才が大好きだというアメリカ人男性や、 ロシア人、フランス人、カナダ人など、ウイグルの芸術にとても感動しているようでした。 この人たちも参加費2,000円だけではなく、募金箱にも寄付をしてくだっていました。
このコンサートを発案してくださったヘニさん、ブアイシェムさん、レイハンさん、ジャミラさん、ニジャットさん、 ズルピカルさん、アイニサさん、ほんとうにありがとうございました。そしてお手伝いくださったウイグル人、トルコ人の皆様、ありがとうございました。 そして、かわいい声で詩を読んでくれたターシャ・ウラムジャンちゃん、アブドアキム・ウラムジャンくん、ありがとう!!
ウイグル人の皆さんが出演するチャリティコンサートは、 他団体や企業などの主催・協賛により、大阪や芦屋でも開催。たくさんの義援金が集まりました。 (写真は4月17日、芦屋市・山村サロン)
私たちの願い
レイハン・パタール(顧問)
地震発生の当時、ちょうど大学の建物の六階にいました。一瞬めまいがしたのかなと思ったのですが、 すぐに地震の揺れとわかりました。その地震が日本にこんなに被害をもたらすとは思いもよらなかったです。 日本は地震が多い国ですから、地震対策はどこの国よりも万全だから大丈夫だといつも思っていました。 しかし、今回は地震よりも津波などによる被害の大きさに言葉をなくしました。 毎日流れてくる地震のニュースを見て、3月19日に予定していた天山会のノルズ祭は大丈夫かなと心配して会長の柿崎さんに電話しました。 「こんな時こそ励まし合うことが必要です。予定通りやりましょう」と、おっしゃいました。 チャリテイーコンサートの話はノルズ祭の時に持ちあがったのです。「被災地を支援するために私たちは何かをやりましょう」、 「私たちは長い間お世話になってきました。こんな時こそ私たちもできる限りのことをやらなくちゃ」と、 みんなが意気投合してチャリティーコンサートを決めました。コンサートの企画から義援金を送るまで、 天山会をはじめ多くの団体、多くの方々のご理解、ご協力、ご支援をいただきました。心からお礼を申し上げます。 一日も早く被災地で楽しい歌声、賑やかな楽器の奏でる音が流れることを祈っております。これが私たちの願いです。
外国の方のやさしさ、心のひろさ
山本 三沙子
桜の花のまだきれいな4月16日、東日本大震災の1日も早い復興を願って、ウイグルの皆さんによるチャリティコンサートが開催されました。 私の所属する「ソロプチミスト京都―北山」は、ウイグルの子どもたちの教育支援をしておられる天山文化交流協会のお手伝いを少しさせていただいている関係で、 今までも何回かコンサートに参加させていただきましたが、いつも感動しております。今回も美しいダンス、民族楽器の演奏、 そしてレイハンさんのと
てもよくわかる説明は異文化でありながら、なぜかなつかしい響きを感じました。 「今こそ日本でお世話になっている私たちにできることのひとつは……」とご案内に書いてありましたが、 私たち日本人はどれだけのことをさせていただいているのか、と少し恥ずかしいような気持ちになりました。 今回の震災に際して外国の子どもたちが
募金箱に協力して「負けないで、がんばって!僕たちにできることはこれぐらいだけど」という報道を見て、 胸が熱くなりました。決してあり余ったお金からでなく、いっぱいいっぱいの生活の中からの尊い義援金です。 外国の方のやさしさ、心のひろさを感じます。立ち直るのに何年も何十年もかかるであろう被害を思うとき、 心は硬く固まってしまいそうな気がいたしますが、同時に多くのことを学んだと思っています。
あのときの踊り手や演奏する人の笑顔はみんなに伝わり、きっと被災地にも届いたことと思います。 皆さんの温かいお心に感謝いたします。ありがとうございました。
ウイグルから、やさしさを
水谷 幸子
「ウイグル……中国の西の方、シルクロードの民という認識しかなく、踊りと歌の催しに誘われ、 なんとなく 中国のイメージで開演を待ちました。あれっ! タイの踊りのよう! チベットの帽子みたい! きらびやかな衣装! 出演者は、幼少の頃から踊りを勉強してとあり、今も日常的に踊られるのかしら? 特別な時の踊りなのかしら? ウイグルにはどんな自然、文化、暮らしがあるのかしら……? いろいろ思いをめぐらし、遠いウイグルを少し近くに感じ、楽しく拝見拝聴いたしました。 世界の人々から、被災の国、日本に多くの支援が寄せられています。
今回もウイグルから、このようにやさしさをお届けくださいましてありがとうございました。
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◆留学生が参加したイベントの開催報告
2月6日 民族芸能「シルクロードからのウイグルの風」 兵庫県立美術館
兵庫県立美術館が主催し、当会が企画協力した催しです。 会場のミュージアムホールには160人を越える人たちが集い、レイハンさんのお話に耳を傾け、 またウイグルの華やかな民族芸能を楽しみました。以下、レイハンさんからの感想を紹介します。(村岡 正司)
『無事終了してほっとしているところです。お客様に楽しく参加してもらい、ウイグルのことを少しでも知ってもらい、理解してもらえたのではないかと思っています。イベントが終了してからもお客様が随分残って、ウイグルのものを触ったり、皆さんと話をしたりしていました。とても嬉しかったです。皆様が一生懸命に助けてくださった、 協力してくださった、応援してくださったおかげです。心から感謝しております。いろいろと本当にありがとうございました! レイハン』
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3月19日 第8回ノルーズ祭
ノルーズはウイグルのお正月。春の訪れと農業の始まりを祝う年一度のお祭りです。 東日本大震災後の暗いムードの中、心配しましたが、多数の参加者を得て、盛会のうち楽しいノルーズ祭りとなりました。 なお会場では被災者への義援金33,007円が集まりました(3月23日、日本赤十字社へ振り込みました)。
今回は新しい試みとしてレストラン会食の形式で実施し、参加費用はすべて個人負担ということで、 みなさんわけへだてなく食べて、飲んで、おしゃべりして……愉快なひと時を過ごしました。
会場:大阪市港区
トルコ料理レストラン「バーブル ハヤツ」
参加者:ウイグル34名(うち子ども4名) 日本21名 計55名
今までのように準備や設営に苦労することがない分のびのびと楽しめたので良かったと思います。 いつも参加の方々の他、トルコから来日のワーリスさん、名古屋のムフタールさん、 大阪のアパールさんなども顔を見せ、大いに話がはずみ、盛り上がりました。 食事もトルコ料理バイキングのため、ハラールの問題もなくお腹いっぱい食べられたようです。 初めて参加の人の自己紹介では、被災地仙台から来た家族もいてびっくり、 身につまされたり、日本人顔負けの立派なスピーチに感心したりしました。
次第については、挨拶乾杯から始まって、踊りやノルーズの話、詩の朗読、ビンゴゲームなどありましたが、 貸し切りではないため他のお客さんもいて、ちょっぴり遠慮がちに、またお店のBGMのため、 話がよく聞こえなかったりしました(お店はとても協力してくれましたが)。 全体で楽しむ場面が少し物足りなかったかもしれません。来年は是非貸し切りで思いっきり楽しみたいものです。(依田 雅子)
ノルーズ祭の詩と解説(依田 武)
留学生のお子さんの作文紹介
京都大学の留学生、ウマルジャンさんが、10年以上におよぶ留学生活を終え、 4月26日に一家で帰国されました。長女のアキダさんは京都市内の小学校に通っていました。 読書好きで地域の図書館の本をとてもたくさん読み、学校の感想文コンクールで賞を取ったそうです。 記憶力がすごく、将来は歴史学者になりたいとか。
そのアキダさんの作文をご紹介します。 (4月12日、佐竹さんのお宅にて。アキダさんは写真左から2人目、ウマルジャンさんは右から2人目)
一番大切なもの(感想文コンクール受賞作)
アキダ・ウマルジャン
私の一番好きな本は、野口 英世です。私に勇気をくれたり一番大切な人を教えてくれた英世です。 幼いころ左手に大やけどをしてしまいます。そして小学校に入学して、友だちに「手坊 手坊」とからかわれます。 自信をなくした英世は、お母さんのはげましの一言でやる気を出しました。それから英世は、毎日勉強をしました。 いつのまにか優秀になっていました。先生の代わりに生徒たちに教ることになりました。 試験の時、英世は一発で合格しました。それから何年後大人になった英世は、アメリカに行くことにしました。 アメリカでいろんな研究をした英世はノーベル賞を受賞した。私は、そこから野口英世が好きになりました。
ある日英世は大切な研究をした。その研究の発表会がありました。英世の研究した結果は残念でした。 悲しい英世は、いきなりアフリカに行くことにした。知り合いが止めても聞かずにアフリカへ行く事にしました。 アフリカへ着いた英世は、伝染病の実験をはじめました。何日かったある日、英世は寒気がしました。 すぐに病院へ行きました。すると先生から悪い知らせがありました。英世は伝染病にかかっていました。 英世はその状態でも実験をし続けました。英世の病気は重くなるばかりでした。それから英世はこの世を去りました。 私は英世の、母を大切にし、自分のことよりも人の事を考え行動しているところが心にのこりました。 野口英世の思いも毎日いろんなところに実現されているでしょう。
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第13回総会。新会長、新役員が承認されました!
昨年12月19日(日)、神戸市灘区の神戸学生青年センターにて、第13回総会と忘年会を開催しました。 総会には14人、忘年会には35人の参加がありました。
前回に引き続き山梨県から参加された望月伊知郎さんなど、日本人、ウイグル人の親しい顔ぶれが各地から参集し、 和やかな雰囲気のもとに終始した良い忘年会でした。
新疆ウイグル自治区の現在の情勢を考慮し、「シルクロードの旅」については今年度も催行を中止させていただきますが、 柿崎浩子新会長のもと、日本と中国新疆ウイグル自治区との市民交流をより推進し、 会の発展に寄与していきたいと思いますので、今後も一層のご支援ご協力をお願いいたします。(村岡 正司)
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新会長あいさつ
柿崎 浩子
当会設立以来12年、事務局長として微力ながら尽力してまいりました。 このたび森田前会長の後任を拝し、会長の任につくことになりました。 12年前ほどの体力はありませんが、ウイグルの文化を日本に広め、 また現地の子どもたちの教育支援を長く続けられるよう、これからも力を尽くしますので、 みなさま、どうぞよろしくお願い申しあげます。
≪追悼 森田前会長≫
ウイグルが大好き、沙漠が大好きな人でした
柿崎 浩子(会長)
前会長、森田純夫さんのご逝去にあたり、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
3月13日午前、森田純夫さんが亡くなりました。故、山本寿雄元会長のあとを継ぎ、 ウイグル旅行の企画をはじめ、会の行事も先頭に立って頑張ってくだいました。いつも大きな声でしゃべり、 元気はつらつとしておられ、こんなに早くお別れすることになるとは信じられませんでした。
ウイグルが大好き、沙漠が大好きな人でした。もっともっとウイグルの各地を旅したかったことでしょう。
天上に行かれてからも私たちの活動を見守っていてくださると信じます。どうぞ安らかにお眠りください。 合掌
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森田さんの思い出
レイハン・パタール(顧問)
天山文化交流協会のイベント「ノルズ祭」の後、前会長の森田さんが3月13日に癌でなくなられたことを知り、驚きました。
2008年6月15日 ウメル・ママットさん送別会にて
「ノルズ祭」の前に「ノルズ祭」に関して委員の皆さんがメールでやり取りをしましたが、前会長の森田さんから何のコメントもないなと、ちらっと思いました。 いつもだと必ず森田さんからコメントがあり、参加できるかできないかの連絡がありますが、まさかこんなことになっていたとは思いもよらなかったです。
森田さんと知り合って9年近くなりますが、思い出はたくさんあります。まずはいろいろな趣味があることに感心しました。 旅行をすること、旅行記を書くこと、絵を描くことなど、癌で手術されてからも確かチベット旅行へ行ったり、 絵を描き続けたりしていました。天山会の新疆旅行のとき、子どもたちに友情奨学金を贈呈しますが、 森田さんが天山会の会長になってから、贈呈式の時子どもたちに向かっていつも口にするのは、 「私たちは日本から来ました。日本のお姉さん、お兄さん、おじさん、おばさんたちがいつもあなたたちを応援しています。頑張ってください」という応援のメッセージでした。
2009年12月5日 総会にて
天山会のシルクロード旅行は事情により一時中断していますが、天山友情奨学金の贈呈は続けています。 森田さんがアマンニサハン(Amannisaxan)が大好きであることもまた印象深いです。 入手したアマンニサハンの小説を日本語に訳すことができないかと一時一生懸命でした。 訳すためにはウイグル語ができる留学生に頼むしかありませんが、留学生たちは自分の勉強やアルバイトなどで精いっぱいで、 訳の方に時間などを回す余裕はなかなかないのが現状でしたので、結局ほんの少ししか訳すことはできなかったそうです。 ちなみにアマンニサハンは16世紀のヤルカンドの王妃で、世界無形文化遺産に登録されたウイグルの古典音楽「12ムカム」の収集、 整理に貢献した人物で、難産のため34歳の若さでなくなりました。
私たちを理解し、応援し続けてくださった森田さんが亡くなられたことを本当に残念に思います。ご冥福をお祈りいたします。
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行 事 案 内
ウイグルの家庭料理を楽しむ会2011
日本文化のルーツといわれるシルクロード周辺、中国・新疆
ウイグル自治区各地のオアシス都市からやってきたウイグル人たちが、故郷の家庭料理を手作りします。
ポロ(ウイグル風炊き込みごはん)、ラグメン(皿うどん)、チュチュレ(ワンタン)などなど、
人参、トマトなどの緑黄色野菜をたっぷり使った、いずれも大変ヘルシーな料理です。
食後はみんなでウイグルの民族舞踊も体験しましょう!!
●日時:6月5日(日) 午後2時〜9時
★料理作りを体験したい方は2時、
交流パーティのみに参加したい方は5時までにお越し下さい。
■料理作りをされる方はエプロンをご持参ください。
●会場:神戸学生青年センター(ホール・調理スペース)
★神戸市灘区山田町3-1-1 http://www.ksyc.jp/
みんなで料理を作ったあと、
会場はウイグルダンスも飛び出す楽しい
交流パーティーに!!
阪急神戸線:六甲(ろっこう)駅下車。
山側(北)へ出て直進、次の四つ角(三井住友銀行を越えた次の角)を右折、その次の角を左折し、左側。駅から徒歩3分。
●会費:一般3000円、留学生・学生500円
(料理材料費・飲物代・会場費を含む)
★参加申し込み締め切り:6月2日(木)
〈電話/Fax〉078-582-3691
〈メール〉nowruz@hotmail.co.jp
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(編集後記)◆この半年間は実にいろいろなことが起こりました。 まずは森田会長の退任、柿崎新会長の就任、新役員体制のスタートでした。 新しい体制になり、2011年度もさあこれから……と思っていた矢先、東日本大震災が起こりました。 大阪港のトルコ料理レストランを会場にリフレッシュしたノルーズ祭の席上で、被災地支援チャリティコンサートの構想が持ち上がり、 緊急企画、会場確保、広報活動と毎日がめまぐるしく過ぎていきました。 ◆そしてその成功にほっとしていたころ、今度は森田前会長の悲報を受け、関係者一同深い悲しみに包まれました。 未だに信じられないような気持ちです。◆大震災の被害は想像を絶し、被災地の復興までにはまだまだ時間がかかりますが、 今後も機会をみつけて、当会なりの支援を継続していけたらと思っています。(MURAOKA)
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会報
天山の風
第25号
__________________________________________________________________________________________________________________________ 発行日:2011年5月9日 天山文化交流協会発行 発行責任者:柿崎浩子 編集責任者:村岡正司
事務局:〒651−1212 神戸市北区筑紫が丘7−5−1 依田方 連絡先:Tel/Fax078-582-3691
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/smorita/index.html
天山文化交流協会年会費(1,000円)、友情奨学金(年間1口3,000円)は下記口座へ送金ください。
郵便振込口座番号:00910-3-0080801 加入者名:天山文化交流協会(通信欄に会費・奨学金の種別をご記入ください)
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